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冠詞の“a (an)”や“the”の使い分けには、本当にいつも悩まされますよね。基本的な使い方は知っているはずなのに、なかなか正しく使うことができないのがこの冠詞です。実際、ネイティブでも冠詞の使い方を結構間違えることがあるそうです。
たかが冠詞と思っても、これを適切に使いこなせないと、不自然な英語表現になってしまったり、時には自分が意図しなかったことが相手に伝わってしまうケースもあります。特に冠詞の“the”の用法については、意外に知られていない奥深い世界があります。
冠詞のごく基本的なルールとして、会話の中で名詞を扱う際に、それが数えられる名詞で、特定できない/しないものである場合には“a (an)”を付けて表現します。一方で、前の文脈で語った同じ名詞について繰り返し語る場合には、その名詞に“the”を付けて表現します。また、ある名詞が何か特定のものを指す場合、そこにある椅子やテーブルなどそれとわかるものである場合や、唯一無二のもの(例えば、地球:the earth、太陽:the sun、世界:the worldなど)などにも“the”を付けて表現します。その他、最上級の形容詞や副詞の前に“the”を付けることは一般的ですね。
上記の基本ルールに加えて、冠詞の“the”を付けるか付けないかで英文の意味がまったく違うものになってしまうケースがあります。例えば、next week と the next weekの意味の違いについてご存知でしょうか?I’ll do it next week. と I’ll do it in the next week. では「いつやるのか」が違ってきます。前者では文字通り「来週やります」になりますが、後者では「(今から)今後1週間のうちにやります」という意味になります。
同様に、“the”のあるなしで意味することが違ってくるケースをもうひとつ紹介します。日常的に何気なく使うことのあるone of them 「彼らのうちの1人」 や two of them 「彼らのうちの2人」という表現ですが、これがthe two of themとなった場合、上記とは違う状況を表現することをご存知でしょうか?例えば、He has brothers. I met two of them. と言えば「彼には兄弟がいます。私はその兄弟のうちの2人に会いました」となります。つまり、彼には少なくとも3人以上の兄弟がいることになります。
ところが、He has brothers. I met the two of them.と言うと「彼には兄弟がいます。私はその2人の兄弟に会いました」となり、彼の兄弟「全員」に会ったという意味になります。つまり、彼には2人兄弟がいることになります。このように、その人数(数)が対象となっている全員(全部)を示す場合にはthe two of themのように“the”を付けて表現するのです。
ちなみに、最上級の表現については、“the”を付けない場合や“the”が省略可という場合があります。例えば、My motivation is highest before holidays. 「私は休日の前、最もやる気が出る」や This river is deepest around here. 「この川はこのあたりが一番深い」 のように、同一の人物や同じ物の中での最上級が表現される場合には“the”が付きません。また、副詞の最上級はいつでも省略可能です。例えば、Which season do you like (the) best? 「どの季節が一番好きですか?」という具合です。
ところで、私の場合、英語における冠詞の存在意義にふと気づかされたのは、大学で英文のクリエイティブライティングの授業に参加していたときです。ある週の創作課題が A Wife’s Reason for Divorce 「ある妻の離婚理由」だったのですが、その課題を提出した直後に The Husband’s Reason for Divorce 「夫の離婚理由」という課題が出されました。
私を含む受講生は皆一瞬、今度は世の夫たちが離婚を決意するであろう理由について創作すればよいかと勘違いしたのですが、アメリカ人講師が黒板に書いた文字をよく見ると、Husbandの前に特定を示す冠詞の“the”が付いているではありませんか!つまり、この夫は、前回の課題に登場した妻の夫という意味になり、「その夫の離婚理由」が新しい課題として出されたということです。よって、受講生には、夫の離婚理由を少なからず妻の離婚理由との関連性の中で語ることが求められたわけです。
ある受講生は、「どうしよう!前のストーリーで夫を殺してしまったんだけど!」と言って嘆いていました。私自身も、「こんなことなら、前回あんな内容を書くべきではなかった」という後悔の念でいっぱいになったものです。この課題で、妻と夫の互いの葛藤についてうまくつじつまを合わせられたかどうかは覚えていません(笑)。
以上のように、冠詞は英語においては結構重要な要素で、決して無視のできない存在です。あなたもこれから英語を学習する際には、改めてなぜここに“the”があるのだろうと考えてみてください。きっとそこには、何気なく深~い意味が隠されていることと思います。
See you!