日本人の英語はキツイ!?

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私にとって初めての海外旅行は、20代前半の頃、当時勤めていた会社の仲間たちと出かけた香港&マカオツアーでした。ちょっとした団体旅行でしたので、現地のツアーガイド付きのマイクロバスをチャーターして観光しました。香港のガイドさんもマカオのガイドさんも普通に日本語を話してくれたのですが、なぜかどことなく違和感を覚える日本語だったのです。現地では旅行気分に浸っていたためその理由がわからなかったのですが、日本への帰路についた時、仲間の1人が言いました。「気づいてた?香港のガイドさんの日本語はみんな過去形、マカオのガイドさんのはみんな現在形だったよ」あの違和感はそういうことだったのか、と皆で大笑いしたものです。(当時のガイドさん、ご免なさい!!)

私たちは日常、現在のことを話す場合には「~です」「~します」と現在形で、過去のできごとを語る場合には「~でした」「~しました」と過去形を用いて表現します。英語でも同様に、現在のことであれば動詞の現在形を使い、過去のことであれば動詞にedを付けるなど過去形を使って表現しています。ところが、英語の過去形には、過去の事象を表現するだけではなく、もうひとつ重要な役割があることをご存知でしょうか?

それは、過去形を用いると遠慮がちで丁寧なコミュニケーションができることです。例えば、“I want you to join us.” は、「あなたに参加してもらいたい」というストレートな表現。一方、“I wanted you to join us.” と過去形を用いれば、「あなたに参加していただければと思いまして」 という控えめな表現に変わります。

相手に何かを依頼する際にも、Will you …? や Can you …? ではなく、Would you…? や Could you …? と will や can の過去形を用いた方が丁寧な表現になるというのは学校英語で習ったとおりですね。would や could には「もし可能であれば」という仮定的な意味合いが含まれるため、より控えめな表現となるのです。また、質問のトーンを和らげる前置き表現として定番の I’m (just) wondering…? 「・・・かなと思いまして」も、I was (just) wondering…? と過去進行形にすることで、より柔らかいニュアンスを表現することができます。

過去時制が使われる「仮定法過去」と呼ばれる用法が、なぜ「過去」ではなく現在の仮定を表現するのか不思議に思われたことはないでしょうか?そもそも英語の過去時制というものは、過去を表現する時制というよりは、現実からの「距離感」を表現する時制だと言われています。つまり、現在の事実に反する仮定的状況について語ったり、物事を遠まわしに伝えたりする場合に使われる時制なのです。

英語には日本語の敬語に該当するものはないと認識されている方がいるようですが、実は英語にはさまざまなレベルの丁寧表現やフォーマル表現が存在します。英語の世界でも、目上の方に対する時や、顧客や上司を交えたオフィシャルな場面では、ネイティブスピーカーたちもかなりフォーマルな表現を使って会話しています。ですので、今後ビジネスで英語を使う機会のある方には、ひととおりのフォーマル表現を学ばれることをお勧めしたいと思います。

以前働いていた職場で、「日本人の英語はダイレクトすぎてキツイ」と言っていたアメリカ人がいました。その理由のひとつは、前述のような控えめで丁寧な表現方法を知らなかったり、それらをうまく使いこなせなかったりすることにあるのではないでしょうか。

英語の初心者レベルの方は仕方ないと言えば仕方ないのですが、海外のホテルやレストランなどで、日本人観光客がよくこんな英語を口にしているのを耳にします。部屋の鍵を受け取りたい時には “Give me my room key.”、トイレの場所を尋ねる時は “Where is the restroom?”。 文法的には何ら問題はありませんが、このようなコミュニケーションは、ネイティブスピーカーからすると、とても乱暴でぶしつけな表現に聞こえてしまうものです。

流暢な英語を話せなくても、その場その場で相手へのちょっとした気遣いや敬意、そして思いやりが感じられるようなコミュニケーションができれば、あなたはきっとどこに行っても第一級の大人のゲストとして扱われることだろうと思います。

See you!