イディオムは報告上手

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イディオムという言葉を耳にされることがあるかと思います。イディオム(idiom)とは、2つ以上の英単語が結びついてさまざまな意味を表現する慣用語句や成句のことです。英語のネイティブスピーカーたちは、このイディオムが大好きで、日常会話からビジネスコミュニケーションに至るまで、会話の中に常に沢山のイディオムを散りばめています。ネイティブたちがイディオムを好んで使う理由はいくつかあるようですが、多くのイディオムには独特の訴求力やイメージを喚起させる効果、また状況を柔らかく伝えられるメリットもあるため、仕事英語の世界ではとても重宝する表現方法なのです。

状況報告に便利なイディオム
例えば、ボスからミーティング資料の準備などを頼まれている場合、いつ何時準備の進捗について尋ねられるかわかりません。「資料の準備はどう?」などとふいに聞かれた場合、まずはwork on という超便利なイディオムを使って、“I’m working on it.” 「対応しています」と答えます。work on は「~に取り組む」「~に従事する」を意味するシンプルな表現ですが、内容はさておき、とりあえず準備が「確実に進んでいる」というイメージを与えることができます。

特に資料を作成する際の状況報告に使える便利な表現として、pull together またはput togetherという表現があります。どちらも考えや情報を「集める」「まとめる」という意味で用いられ、“I’ll pull together the meeting materials by Friday.” 「金曜日までに会議の資料をまとめておきます」。“I’ve put together my initial thoughts for discussion.” 「議論のための最初のたたき台をまとめました」などのように使います。どちらの表現も、何をどんな形式でどこまで作成するという具体的な詳細には触れることなく、とにかく「何かしらを(ちゃんと)形にする」というニュアンスが表現できるため、取りあえずの業務報告にはうってつけの表現です。

また、特定の仕事を「引き受ける」「処理する」という意味合いでは、take care ofというイディオムがとてもよく使われています。このイディオムは、もともと「~の世話をする」「~の面倒を見る」という意味を持っていることから、何か自主的に業務に対応するような雰囲気が醸し出されて、個人的には好きな表現のひとつです。例えば、“He’s going to take care of the translation.” 「彼が翻訳の件に対応する」のように使います。

業務進捗に関するイディオム
プロジェクトの進捗がいつもon schedule / on time 「予定どおり」であるとは限りません。諸事情によりbehind schedule 「予定より遅れて」いるケースもよくあることです。そんな時、報告すべき遅延の正当な理由がない場合には、for some reason 「何らかの理由で」「どういうわけか」という表現がよく使われます。このちょっとした表現を付け加えることで、問題の所在を特定の人や事柄に直接向けることなく、状況を穏便に報告することができるのです。例えば、“Their survey analysis is a little behind schedule for some reason.” 「何らかの理由で、彼らの調査分析が予定より少し遅れています」のように使います。

あなたがもしプロジェクトリーダーであれば、当然どこかで遅れを取り戻す努力をしなければなりません。そんな時に使える表現がkeep ~ on track 「~を軌道に乗せる」「~を順調に進める」、またはget ~back on track 「~を再び軌道に乗せる」「~を再び回復させる」というイディオム。“We have to get this project back on track as soon as possible.” 「私たちはこのプロジェクトをできるだけ早く予定の軌道に戻す必要がある」のように表現できます。trackを使った表現は臨場感もたっぷりで、ネイティブお気に入りの状況表現のひとつです。

プロジェクトの遅れを取り戻すためには、当初予定していたその後のスケジュールを前倒しすべき部分が出てくるかもしれません。(予定の日付・時刻を)「繰り上げる」「前倒しする」を表現する時はmove upを使います。この表現も、見るからにスピードアップを喚起させますね。例えば、“I asked them to move up the delivery date.” 「私は納品日の前倒しを彼らに依頼した」のように使います。

会議で活躍するイディオム
会議の中で一般的に使われる表現にも、沢山のイディオムが含まれています。まず会議を始める際の一言と言えば、“Let’s get started.” 「さあ始めましょう」が決まり文句。“Let’s start.”というネイティブはほとんどいません。資料を「配る」はhand out -“They are handing out the meeting materials” 「彼らは会議の資料を配っている」。 また、handoutは名詞として(会議などで配布する)資料、印刷物を意味します。配られた資料に「一通り目を通す」はrun through-“Please run through the handout.” 「配布資料をご一読ください」。「議長を務める」はtake the chair -“Diana took the chair this time.” 「今回はダイアナが議長を務めた」となります。

プロジェクトの進捗報告と問題点の確認・議論などがメインとなる定例会議で活躍するのがupdateを使った表現。例えば、“I’ll update you on the client seminar.” 「クライアントセミナーの最新状況についてご報告します」、“I’ll keep you updated on the project.” 「プロジェクトの進展については常にお知らせしていきます」などのように、業務報告をスマートにまとめることができる表現です。update someone on (about) ~で「(人)に~に関する最新情報を提供する」。keep someone updated/posted on (about) ~で「~について(人)に常に最新の情報を与える」。どちらもビジネスで頻繁に使われる表現です。

時間をかけて議論したい事柄があれば、in (more) detail 「(もっと)詳細に」を使った表現が便利。例えば、“I think this should be discussed in more detail.” 「この問題はもっと詳しく話し合う必要があると思います」のように、議論の必要性を端的に表現できます。何かを「(より)詳しく見る・検討する」表現として、take/have a close(r) look at ~という表現もあります。例えば、“Why don’t we take a closer look at the issue in the next meeting?” 「その問題については、次回の会議でさらに詳しく検討してはいかがでしょうか?」のように表現します。

会議の終盤は時間切れになりがちで、いくつかの議題が割愛されたり、次回の会議に持ち越されたりすることもよくあると思います。そんな時に議長が発するのはこんな一言: “I’m sorry to cut you off, but we’re running out of time.” 「発言の途中すみませんが、時間が残り少なくなっています」。cut someone off で「(人の話を)さえぎる」 「に割って入る」。run out ofは「~がなくなる」「~が切れる」。そして、会議のまとめによく使われる定番表現がwrap up 「~を仕上げる」「(会議などを)終わりにする」です。“Let’s wrap it up quickly.” 「取り急ぎまとめましょう」のように使って会議を締めくくります。

このように、動詞に前置詞や副詞を組み合わせたイディオムには、それぞれの行動のイメージや方向性、またその場の情景描写的なものまで伝えられる表現もあり、こうした表現を用いることで、業務の進捗状況などを簡潔でありながらも効果的に伝えることができます。そして、ネイティブスピーカーたちは、こうしたイディオムの機能を十二分に活用しています。ビジネス上手とは、つまりコミュニケーション上手のこと。あなたもコミュニケーションの達人を目指すなら、ぜひイディオム攻略を目標のひとつに掲げてください。

See you!