LとRとラ行の関係

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日本人は、ひらがな、漢字、そしてカタカナを、状況に応じてとても器用に使いこなしていますね。外国の人名・地名や外来語の表記に関しては主にカタカナを使用し、もともとの言語の発音を微妙に日本語化して表現しています。特に英語についてはとても沢山の英単語をカタカナ化して日常生活に取り入れているため、多くの日本人は、英語圏で暮らすまだ小さな子供と比較すれば、たぶん彼らを上回る数の英単語を知っているのではと思います。ところが、私たちは日頃、便利なカタカナ英語にあまりに慣れすぎているため、英語を英語本来の音で発音することがとても苦手です。残念ながら、カタカナ英語の発音では、英語圏の人たちとコミュニケーションを取ることはできません。カタカナ英語は、日本語を話す日本人だけが理解できる言語なのです。

英語のコミュニケーションで最も重要な要素は?
先日、英語が全く話せなかった頃にアメリカ勤務を命じられたという方の当時の苦労話をお聞きしました。当時は、渡米する際の飛行機の中で「何をお飲みになりますか?」と尋ねたフライトアテンダントの英語がわからず、隣の席の人から説明を受けるレベルの英語力だったそうです。現地オフィスでのご苦労は並大抵のものではなかったとお察しする次第です。オフィスでの社員たちの会話はチンプンカンプン。それでも、書類の英語はそれなりに読むことができたため、仕事の内容は理解できたということでした。

そこでその方が現地の人たちにお願いしたことは、「書類を見れば仕事はこなせるので、どうか私には話しかけないでください」というもの。これって、なかなかスゴイお願いですよね!一方、現地の人からのその方へのお願い事項は、「文法がどうあれ意味はだいたいわかるので、話す際には、どうか発音だけはできるだけ我々の発音に近づけてほしい」ということだったそうです。当時のその方の英語は、おそらくカタカナ英語の発音だったのではないかと思います。カタカナ音と英語の音では発音方法が異なるため、日本人の耳では英語に近いと感じる音でも、ネイティブスピーカーの耳にとっては全く違う音と認識されてしまうのです。

私たち日本人が英語を話そうとする時、一番気を使ってしまいがちなのが文法(の正しさ)ではないでしょうか。そして、次に気になるのは、正しい単語が使えているかどうか。でも、ネイティブの立場からすると、コミュニケーションで重要な要素はもっと別のところにあるようですね。

L・Rとラ行はこんなに遠い
もうひとつ、以前会社で一緒に働いていた後輩の男子のエピソードをご紹介します。彼は、あるプロジェクトを担当していて、一緒にプロジェクトに関わっていたオーストラリア事務所の女性担当者と定期的に電話会議をしていました。ある時、そのオーストラリアの女性担当者と日本で話す機会がありました。話題が私の後輩の彼に及んだところ、彼女は私にこう質問してきました。「彼と話していると、彼がよく『ラーイ、ラーイ』と言うんだけど、あれはどういう意味?」私は、なるほど、と思いました。これは、私がたまたま彼と同じ日本人であるからこそ想像できることなのですが、たぶん彼は、“Right. Right.” 「うんうん、そうだね」 と相槌を打っていたつもりだったのでしょう。単語の末尾に来るtは英語の会話ではよく消える音となりますが、彼の場合は、肝心のRの発音が無意識に(日本語の)ラ行の発音になってしまっていたという残念な例だと思います。

日本人の英語リスニングに関する定番の課題に、LとRの音の聞き分けがあります。昔、NHKの英語アニメ番組で、一匹の動物キャラが「日本語ではLとRは同じなんだよ」と言うと、もう一匹が「えーっ!マジで?!」とひどく驚くシーンがありました。英語圏の人々にとっては、こんなにかけ離れた発音のLとRの区別がないことが信じられないということでしょう。日本人的感覚で言えば、英語のLの音はラ行の発音に結構近いものを感じるかもしれません。しかし、実際には、Lとラ行とでは、音を出す時の舌の位置が明確に違います。Lで始まる英語も、Rで始まる英語も同じラ行のカタカナで捉えることが習慣化している私たち日本人は、「L」「R」「ラ行」は、皆それぞれ発音方法が異なる別個の音であることを再認識し、改めてLとRの正確な発音方法を練習することが必要です。リスニングの習得とは、ずばり自分が正しい音を発音できるかどうかです。

英語の発音は科学的に学ぶ
英語の発音は、英語圏での生活経験がなければ身に付かないものではありません。言ってしまえば、科学的に、しかも独学で身に付けることが可能です。そのためには、まずは英単語を学ぶ際に面倒くさがらずに発音記号を確認することが大切です。TOEICのハイスコアなどをお持ちの方でも、「発音記号は見たことがない」という方がたまにいらっしゃいますが、発音や聞き取りのスキルを高めていく上でも、発音記号に記されている母音や子音の音の違いを一通り学習されることを強くお勧めします。そして、発音記号に示された各音を出す場合の舌の位置、口の形、唇の使い方、さらに口の中のどの位置で声に出すのか、(無声音の場合は)空気を出すのかを学びます。これらを理解して実践することで、あなたはいつでもカタカナ英語から卒業することができるのです。

英語のコミュニケーションにおける重要なポイントは、英語の「音」を正しく認識し、それを正しく伝えることです。ネイティブの発音をただ聞き流しているだけでは、本当の意味でリスニングやスピーキングのスキルアップには繋がりません。あなたも、発音の理論を学習し、それを繰り返し練習することで、ぜひネイティブ並みの正しく美しい発音を習得してください。同時に、その時点で、あなたのリスニングの能力も圧倒的にレベルアップしているはずです。

See you!