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秋が一段と深まりました。私は、秋から冬にかけての季節が一番好きなのですが、なぜかリビングルームの真ん中にはEndless Summerという題名のカラフルなリトグラフを飾っています。晩秋の気配に心を奪われつつも、今日も“終わらない夏”を眺めながらビールを飲む私です。
以前TVのある番組で、1980年代のクラシックソウルの名曲“Between the Sheets”を日本人アーティストが歌っているのを聴きました。曲名が示すようにアダルトオンリーな内容のラブソングを、彼はメロウな雰囲気たっぷりに熱唱していました。でも、ひとつとても残念だったのは、sheetsの発音です。この曲ではbetween the sheets というフレーズが繰り返し出てくるのですが、彼は毎回between the seatsと歌っていました。これを聴いていて「やっぱり発音は大切!」と強く思いましたので、今回は英語の発音に関する日本人の悪い癖や勘違いについて書いてみました。
まずは、英語学習の際にあまりフォーカスされない「音節」という概念から入ります。音節は、音のひとかたまりを意味し、英語ではsyllable (シラブル)と言います。この音節のあり方が日本語と英語ではかなり違うため、私たちにとって英語を話したり聴いたりすることがとても厄介なのです。日本語における音節は、母音だけ(あ・い・う・え・お)の場合と、子音+母音(例:か-ka・き-ki・く-ku・け-ke・こ-ko)の場合の2通り(「ん」や「ー」は前の文字とセットになる)です。これに対して、英語の音節では組み合わせの種類が日本語の倍ほどあり、日本語と違って子音の単位で区切られる場合があります。
日本語の場合は子音の後に必ず母音が入るため、よくある日本人の悪い癖は、英語の子音の後に不必要な母音を無意識に入れてしまうことです。例えば、spring / school / straight という単語を発音してみてください。日本語的に読むと、それぞれ「スプリング (4音節)」 「スクール(3音節)」 「ストレート(4音節)」となりますが、英語ではいずれも1音節の単語であるためすべて一息で発音しなければなりません。注意すべきは、[supuriŋ] [ sukúːlu ] [ sutɔréitɔ ] のように、子音の後にイタリック体で表記した[ u ]や[ ɔ ]といった母音を入れないことです。単語をはっきりと明確に発音しようとすればするほどネイティブに通じなかったという経験がある方は、このように子音のあとに不必要な母音を入れて発音してしまったことが原因かもしれません。
その一方で、必要な母音や子音を落としてしまうことも日本人にはありがちです。母音の例で言えば、capitalの i やuniversityの後半の i の部分をきちんと発音していない人をよく見かけます。また、日常使っているカタカナ英語の影響からか、英語では本来発音すべき子音を落としてしまうケースも多々あります。例えば、液体を意味するliquidという単語。私たちにはかなり馴染み深い英語と言えますが、これを[ líkwid ] と正しく発音できる人は意外に少ないのです。ポイントは、[ w ]という子音の発音を忘れがちだということ。つまり、正しくは「リキッド」ではなく「リクウィッド」に近い感じですね。実は、私も過去にこの[ w ]の音を落として発音していて、ネイティブに全く通じないことがありました。英語では子音のひとつひとつが大切な役割を担っているのだということを、この時に痛感しましたね。
日本人が苦手としている発音の多くは、英語の子音にあると言われています。確かに、th や v や r の発音は日本語にはないものなので、初めは難しいかもしれません。ただし、これらの子音は、正しい口の使い方や発声方法で音を出してさえいれば、ネイティブにもそうそう誤解されることはありません。ここで前述の“Between the Sheets”に話が戻りますが、私の経験では、むしろこのようにseatとsheetの[ s ]と[ ʃ ]の発音や、musicとusualの[ z ]と[ ʒ ]の発音など、日本人にとってそうハードルが高くないと思われる音を混同してしまう人が結構多いように感じます。英語の発音については、適当でも許される部分とそうでない部分があります。英会話を学ぶ際には、まず個々の母音や子音の音の違いをしっかり理解して使い分けられるようにすることが極めて大切です。
最近になって、英語と日本語で音の捉え方におもしろい違いがあることを学びました。それは、『英語は音を長い/短いでは判断しない』ということです。例えば、ネイティブには日本語の「おじさん」と「おじーさん」の違いがわからないというのです。私たち日本人にとっては不思議に思えますが、彼らは音を長さではなく、あくまで質で判断するということです。
これに関する具体例として、私の過去の失敗談についてお話しします。社会人になりたての頃、同じ会社のイギリス人から“Where do you leave?”と聞かれたことがありました。(「どこに出発するか?このあと外出する予定だったっけ?」)と、頭の中が一瞬真っ白になってしまいました。私がすぐに答えられずにいたため、たぶん英語が聞き取れなかったのだろうと思った彼は、親切にも「リーーヴ、リーーヴ」と、ことさらに音を伸ばして数回発音してくれました。これでもう私の頭の中はとにかくL・E・A・V・E一色です。この会話はちょっとした成り行きで立ち消えとなってしまったのですが、今、冷静に当時の状況を考えれば、彼は“Where do you live?”と尋ねていたのだろうな(やっぱり)と思います。
つまり、「リヴ」と短く聞こえたらlive、「リーヴ」と長く聞こえたらleaveと判断するのは、日本人の全くの思い込みであり、英語的には完全に間違いということなのです。発音記号の[ i ]と[ i: ]の違いは、単に音が短い/長いの違いだと捉えられがちですが、実際にこの2つは、音の長さというよりも音の種類自体が異なるということを認識する必要があります。
英会話を上達させたい方は、ぜひ発音にはこだわりを持って、細かい部分まで手を抜かずに取り組んでいただきたいと思います。音の学習をおろそかにしてしまうと、いつまで経ってもリスニングやスピーキングのレベルが上がらないため注意が必要です。発音に関するちょっとした思い込みを払拭するだけでも、コミュニケーション力が思いのほか向上しますよ。
See you!