Miss the Forest for the Trees 

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せみの鳴き声も下火になってきた今日このごろ、まだ猛暑が続くなかでのパラリンピック選手たちのパフォーマンスに感動する一方で、アフガニスタン情勢もとても心配です。現地の日本関係者が一日も早く退避できることを願います。

さて、英語リスニングの課題として、「長い英文になると、とたんにわからなくなる」とおっしゃる方が非常に多いです。単語レベルではほぼ聞き取れているつもりなのに、最終的に相手の言ったことが理解できない、話の主旨がわからないという経験は、英語学習者ならどなたもお持ちのことと思います。そこで今回は

長い英文が聞き取れない

というテーマで、長い英文を聞き取って、内容を正しく理解するために必要なことについて考えてみます。短い英文は聞き取れるのに、なぜ長い英文だとうまく聞き取れないのでしょうか?この原因について、多くの人は、単にネイティブスピードについていけないためだと思い込みがちです。そのため、長い英文になればなるほど、単語のひとつひとつを全力集中で聞き取ろうとする傾向があります。

実は、長い英文を聞いて理解できない理由はひとつ。それは、構文が把握できないからです。

そもそも、音が聞き取れるということと、内容が理解できるということは、全くの別物です。もちろん、単語を聞き逃してもよいということではありませんが、たとえ個々のパーツレベルでは聞き取れていても、英文の全体構造が把握できていなければ内容を正しく理解することはできません。例えて言えば、「木を見て森を見ず (Miss the Forest for the Trees) 」の状態に陥ってしまうということです。これを解消するには、耳から入ってきた英文の文法・構文を瞬時に処理できるようになることです。

英文法は、英語という世界を旅するための地図のようなものーーこれはある英語トレーナーの方の言葉です。地図がなければ、見知らぬ土地を旅することはできません。長い英文を正しく聞き取るためには、文法・構文の役割を再認識する必要があります。もし、文法や構文という言葉にアレルギーがあれば、代わりに「英文パターン」という言葉にでも置き換えてください。

これまでに文法・構文もしくは英文パターンについて一通り学習した方なら、英文を読んでいる時に「この構文はこう使われるはずだから、この文はこんな意味になるな」と判断できることも多いでしょう。しかし、ネイティブから直接英語で話しかけられると、多くの場合、単語を聞き取ることに集中しがちで、構文を把握するまでには至らないという現実があります。

英語の構文パターンを耳で認識できるようになると、リスニングにおける予測力が格段と上がり、以前は考えられなかったほどリスニングが楽になります。なぜなら、それぞれの構文パターンのルールに基づいて、「こういうフレーズが出てきたら、こういう展開になる」とか「こういう単語がこのように並んだら、こういう意味になる」とか「この単語とあの単語の組み合わせは、こういう意味で使われる」などと英語を聞きながらイメージできるため、常に内容を先読みしながら相手の話を聞くことができるからです。

では、英文が長くなる構文パターンには、実際どのようなものがあるでしょうか。一般的には、接続詞、不定詞や分詞、また形容詞や形容詞的な働きをする語句が多く含まれる場合などがあるかと思います。例えば、以下のような英文がネイティブスピードで話された場合、内容が一度で正しく理解できるかどうか考えてみてください。

Even though Keiko’s father decided not to allow her to attend the party, she was finally able to go there because her mother persuaded him to let her go and also asked her to come home by 12 a.m. / ケイコの父親が彼女をパーティーに出席させないと決めていたにもかかわらず、結局、彼女はそこに行くことができた。なぜなら、母親が彼女を行かせてあげるよう父親を説得し、ケイコには夜中の12時までに帰宅するよう求めたからだ。

He told the old woman who slipped and fell on the icy road close to the hotel to wait while he called a taxi. / 彼は、ホテル近くの凍結した道路で滑って転んだ老婦人に、タクシーを呼ぶまで待つように伝えた。

People wishing to get a vaccine first have to apply for a vaccination ticket online and answer a medical questionnaire to be sent accordingly so that they can ensure their vaccination slot. / ワクチン接種を希望している人は、接種枠を確保できるよう、まずオンラインでワクチン予約券を申請し、その後送付される予診票に回答する必要がある。

英文の内容を正しく聞き取るには、聞こえてくる単語と単語の内容をリンクさせながら、全体でどのような構成になっているかを把握できるようになることが大切です。接続詞がある場合には、前半の内容と後半の内容を関連づけて聞けるようになること。to不定詞を含む構文などでは、1つの文に動詞が複数出てくるため、メインの述語動詞とそれ以外とを区別することや、それぞれの動詞の主語は誰/何になるのかを意識しながら聞くことがポイントになります。また、英語では形容詞的な働きをする長いフレーズが名詞の後に続くことがよくあり、その結果、主語や目的語にあたる部分がとても長くなるケースがあります。これは日本語のルールとは大きく異なるため、私たちがリスニングの際にしばしば混乱する要因のひとつと言えます。

ニュース英語や職場でのディスカッションの内容を正しく的確に聞き取るためには、構文を読み取るリスニングが必要になります。そのためにやるべきことは、文法・構文を意識しながら英文を聞く癖をつけることです。長い英文を何回かディクテーションしてみると、自分がどのような構文/英文パターンの時に聞き取れないのか、あるいは間違うのかといった自分の弱点がわかります。まずはそこから始めてみてください。このように英文の構成を意識したリスニングの練習を繰り返していると、徐々に意識しなくても英文を聞いた瞬間にその構文パターンがイメージできるようになるのです。

これからは長い英文にも無理なく対応できるリスニングスキルを獲得するために、あなたも改めて英語の文法・構文を見直してみませんか?

See you!