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先日、海外ドラマの英語版を観ていて、「何だか今日は英語が聞き取りにくい!」と感じたことがありました。ふと気が付くと、観ていたのはオーストラリアのドラマでした。オーストラリア英語には独特の発音や言い回しがあるので、日頃から聞き慣れていないと、どうしてもわかりにくいと感じてしまいます。外資系企業で仕事をしている方などは、多かれ少なかれ英語で苦労するものですが、今回は、グローバルな業務環境ならではの英語の問題について書いてみようと思います。
英語の種類がありすぎる!
外資系や日系のグローバル企業の多くは、英語を社内共通語としています。しかし、一口に英語と言っても、実際に多国籍の社員たちが話す英語にはさまざまなタイプの発音やイントネーション、そしてアクセントがあります。私たちが日本で触れる機会がある英語は、その多くがほぼスタンダードなアメリカ英語かイギリス英語であるため、ほとんどの日本人は、それ以外のタイプの英語にうまく対応できる『耳』を持ち合わせてはいません。
業務上、待ったなしの環境でやり取りしなければならない相手がこれまで聞いたことがない種類の英語を早口で繰り出してくる状況は、私自身、何度も経験しましたが、本当に辛いものです。対面でのやり取りなら何だかんだと意思の疎通が図れますが、これが電話会議となると最悪です。グローバル企業で仕事をしていると、こういったチャレンジに数多く直面する訳です。
私が以前勤めていたグローバル企業では、日本事務所がアジア・太平洋地区の所属となっていたため、オーストラリアを含む他のアジア事務所のメンバーたちと会議を持つ機会がよくありました。日本以外のアジア国で外資系企業に勤める人たちの多くは、欧米への留学経験があったり、フィリピンやシンガポールのようにもともと英語を公用語とする国の出身であったりするため、もうその時点で日本人よりも数段上の英語のコミュニケーションスキルを有しています。しかも、彼らの英語は、皆それぞれにとても個性的。独特の発音やリズムで『彼らの英語』をガンガン話しまくるアジアのメンバーに、私たち日本チームはいつも圧倒されていました。
もっとも、アジアメンバーたちの個性的な英語は、ネイティブスピーカーをも悩ませてはいたようです。当時のアジア・太平洋統括ディレクターはイギリス人でしたが、彼はある時、アジアメンバーとの間で時折コミュニケーションの行き違いがあると明かしていました。またある時は、会議の場で、インドのメンバーが超早口の英語でまくしたてるように発言した際に、ネイティブスピーカーの一人が「今、何を話していたんだ?」と同僚に尋ねているのを聞いたことがあります。こうしたことは、私たち日本人にとって僅かな救いにはなりました。それでも英語の文化では、たとえ発音が少々悪かろうが、文法が少々おかしかろうが、結果、多少の行き違いがあろうとも、とにかく発言することに価値があるのです。なぜなら、自分の思いや考えを語ることは、それ自体がチームや会議への貢献となるからです。今思えば、アジアのメンバーたちは、この点においても私たち日本人の上を行っていたと思います。
自分の英語が話せない!
私が過去にコミュニケーションで最も苦労したケースは、ヨーロッパチームのメンバーとの会話でした。ヨーロッパの言語は英語との共通点も多いため、ほとんどのメンバーが英語を難なく流暢に話していました。ですが、当時の私の耳には、彼らのヨーロッパ英語の発音や抑揚が私の英語回路とはどうしても嚙み合わず、聞き取りに大きな障害がありました。その上、その嚙み合わないリズムが脳裏にインプットされるためか、彼らを前にすると、自分が話したいことを自分の英語や自分のペースでうまく話すことができなくなるという状況に陥りました。
そこで、知り合いの通訳の方にその切実な悩みを相談したところ、相手の英語がどうであれ、その問題の原因は、「自分自身の英語やスピーキングがしっかり確立されていないだけでは?」という厳しい指摘を受けました。私たちは、英語でうまく会話ができない時に、つい相手の英語は「イントネーションが独特だから」とか「ネイティブ英語じゃないから」などと、半分言い訳かもしれないと気付きつつ、最後は相手のせいにしてしまうことも少なくありません。私が相談した通訳の方によれば、相手の英語パターンによって自分のスピーキングのペースやリズムが乱されてしまう現象は、相手の問題というよりも、そもそも自身のコミュニケーションスキルの問題であるということでした。
多様な英語に対応するには?
当時の私には、「でもね・・」とさらに言い訳したい気持ちもありました。それでも時を経た今、お蔭さまで「なるほどね」と納得できる自分に成長することができました。では、どうすれば多様な英語に対する『耳』や対応力を養うことができるでしょうか?私個人の経験からそれを一言で表現させていただくと、英語の『総合力を強化する』ことであろうかと思います。
総合力の強化には色々なプロセスがあります。リスニングに関しては、初めにネイティブの発音を耳と口とで徹底的に学ぶことをお勧めします。次に、教材用のスタンダードな音声だけではなく、海外ドラマやニュース映像などを観て、さまざまなタイプの生の英語に触れる習慣を身に付けること。使用頻度の高い語彙はもちろん、会話での決まった言い回しや定番のフレーズはできるだけ多くストックしていくこと。また、会話では、その場の状況や文脈から相手の言おうとしていることが推測できるケースがよくあります。こうした推測力を高めるためには、上記に加えて構文力や文法力も大きな武器となります。不思議なことではありますが、英語の総合力が高まるにつれ、クセのある英語や独特の発音・アクセントに出会っても、なぜかそれ自体はあまり気にならなくなっていくものです。英語の総合力を強化するためには、学習深度と学習頻度の両方がとても大切です。バランス良く学習して、ぜひ鉄壁の総合力を身に付けてください!
See you!