知っているようで知らない英語のリズム

こんにちは、eigomob.comへようこそ!           

先週、エリザベス女王のご葬儀をTVで観ていましたが、その模様がとてもおごそかで、胸を強く打たれました。女王の棺は、夫のフィリップ殿下の棺とともにウィンザー城の礼拝堂に納められましたが、礼拝堂で永遠の眠りにつくなんて、何だか素敵ですね。神聖で平穏な静けさに包まれて、どうぞいつまでも安らかにお休みください。

さて、突然ですが、あなたは、英語の発音に関する3つの基本要素をご存知でしょうか? その3つとは、1) サウンド 2) イントネーション 3) リズムです。英語のリスニングやスピーキングをマスターする上で、いずれも重要な要素となります。

『サウンド』は、個々のアルファベットやそれらの組み合わせから成る母音や子音の音声を意味します。言葉は音声によって区別されるため、英語の正しい発音を学ぶことは、スピーキングはもちろん、リスニングを習得する上でも基本中の基本です。そこで、ネイティブの発音には注意深く耳を傾け、自分でも同じ発音、または限りなく似ている発音ができるようになるまで、時間を惜しまず練習することをお勧めします。自分が正しく発音できない音は頭の中に存在しないため、その音を聞いても脳が認識できません。それが英語を聞き取れなくしている原因のひとつなのです。

『イントネーション』は、声の高さを上げ下げすることによる音調の変化で、日本語で言うところの『抑揚』です。例えば、肯定文や否定文では文末が下げ調子であるのに対し、疑問文(Yes/No疑問文)では文末が上げ調子になります。これがイントネーションの変化です。また、同じ言葉や文でも、イントネーションを変えることにより違う意味合いを伝えることができます。例えば、「すみませんが」を意味する “Excuse me.” も、“Excuse me?” と語尾を上げれば、「聞き取れませんでした」「何ておっしゃいました?」という意味に変わります。その他、付加疑問文 “It’s a nice day, isn’t it?” (良いお天気ですね)の “isn’t it?” も下げ調子なら単なる確認、上げ調子なら同意を求める意味合いに変わります。イントネーションの概念は比較的わかりやすく、下げ調子/上げ調子になる場合のパターンも決まっているため、気になる方は、教材等でひととおり確認してみてください。

では、3つめの英語の『リズム』とはどのようなものでしょうか? 実は、私たちのリスニング力とスピーキング力を左右する大きな鍵は、英語のリズムの習得にあると言われています。英語のリズムが身に付いていなければネイティブの英語は聞き取れず、また、リズムのない英語は話しても通じない、とさえ言われています。日頃、英語の音源を聞いてリスニングの練習を行っている方は、「英語のリズムなら知っている」とおっしゃるかもしれません。実際のところ、感覚的にはわかっていても、このリズムを体現できている日本人はとても少ないように思います。

英語のリズムの大きな特徴は、強調して発音される音節がほぼ等間隔で繰り返し現れることにあります。強調される音節と音節の間にある語句は弱く発音されるため、ちょうど山と谷が交互に現れるようなイメージです。そして、山にあたる強調部分は遅め、谷にあたる弱音部分は速めに発音されます。この弱く・速く発音される弱音部分では、音の短縮や脱落、同化等さまざまな音の変化が起こりやすく、日本人にとっては聞き取りの難易度が上がります。ちなみに、文の中で通常は強調して発音される単語は『内容語』、弱く発音される単語は『機能語』として分類されていますが、この詳細については参考書等でご確認ください。

それでは、以下の例文で、英語のリズムの特性について具体的に説明します。(太字強調部分⇒遅めに発音。太字以外が弱音部分⇒速めに発音)           

a) The package is delivered to the hotel by noon.
b) The package will be delivered to the hotel by noon.
c) The package ought to be delivered to the hotel by noon.
d) The package might have been delivered to the hotel by noon.

注目したいポイントは、強調して発音される部分がほぼ等間隔で現れる英語のリズムの法則です。つまり、上記4つの英文をネイティブスピーカーがナチュラルスピードで読んだ場合、package と発音してから delivered と発音するまでに要する時間、delivered から hotel までの時間、hotel から noon までの時間が、a / b / c / d いずれのケースでもほぼ一定になるということです。a / b と比べて c / d では、 package と delivered の間の弱音部分が c) ought to be / d) might have been とやや長めの語句にはなっていますが、リズムを等間隔に保つため、ネイティブは、こうした部分をより速く発音したり、時には c) oughda be / d) mighda bin のように大胆に短縮して発音しているのです。

こうして英語のリズムを紐解いてみると、高低差や強弱がほとんどない同じ長さの音が平坦に続く日本語を話す私たちにとって、英語を話すことや聞くことがいかに難しいかが改めてわかります。とは言え、また逆に、ここでリスニングの攻略法がひとつ見えてきたような気もします。そもそもリスニングでは、一字一句100%を聞き取る必要はありません。強調されている部分がきちんと聞けてさえいれば、話の大筋はつかめるということです。多くの日本人は、リスニングの際に自分が聞き取れない部分に注意が向かいがちですが、実際、聞き取りにくい部分にはそれほど重要な情報は含まれていないことが多いのです。弱音部分のリスニングについては、少しずつ聞き取れる割合を増やしていけばよいのではないでしょうか。

英語のリズムを習得する方法はとてもシンプルです。それは、ネイティブの音声をひたすら聴いてひたすら真似ること。特にリズム感を意識し、リズムに遅れないようについていくこと。そして、頭の中で音やリズムがイメージできるようになるまで、何度も繰り返して練習することに尽きます。

「正しい英語を話しているはずなのに、いつも聞き返される」という方、「知っている単語をできるだけ聞き取ろうとするリスニングに限界を感じている」という方は、英語のリズムを習得することにフォーカスしてみませんか?英語のリズムを脳と身体にしっかりインストールすることで、あなたの話す英語はより英語らしく、通じやすくなり、リスニングは飛躍的に楽になるでしょう。実りの秋となりますように!

See you!