誰もがカン違いする and と or

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私がいつもお世話になっている美容室では、お釣りの紙幣がいつも全部ピン札なんです!今どきスゴイと思いませんか?お金は天下の回りものと言いますが、やはりピン札をいただくのは気持ちが良いものです。ところで、「ピン札」を英語では何と言うのだろうと調べてみたら、「crisp (形容詞)」 と表現するのだそうです。おいしそうな響きですね!

さて、あなたは and と or を正しく使い分けることができますか?「いくら何でも、それくらいできるっしょ!」と思っている方も要注意です。わかっているつもりでも、やたらとややこしいのが and と or の使い分けです。

では早速、「飲食はご遠慮ください」の英訳として正しいのはどちらでしょうか?
A) No drinking and eating.
B) No drinking or eating.

ヒント: (A)が表示されていたら、「飲み物だけならOKなのね」と思う人がいるかもしれません。

「飲んだら乗るな」の英訳として正しいのはどちらでしょうか?
A) Don’t drink and drive.
B) Don’t drink or drive.

ヒント: drink and driveで 「飲酒運転する」という意味になります。

「私は犬派でも猫派でもありません」の英訳として正しいのはどちらでしょうか?
A) I’m not a dog person and cat person.
B) I’m not a dog person or cat person.

ヒント: Aの人は、ひょっとすると猫派かもしれません。

上記は、ほんのウォーミングアップです。引き続き以下にチャレンジしてみてください。

彼女がフランス語を話せる可能性があるのはどちらでしょうか?
A) She doesn’t speak English and French.
B) She doesn’t speak English or French. 

正解はA。 A) 「彼女は英語とフランス語を両方話せるわけではない(どちらかは話せる)」、
B) 「彼女は英語もフランス語も話せない」という意味になる。

彼が私と話した可能性がないのはどちらでしょうか?
A) He didn’t see me and talk to me yesterday.
B) He didn’t see me or talk to me yesterday.

正解はB。 A) 「彼は昨日、私に会っても話してもいなかったわけではない(会ったか、話したかのどちらか)」、B) 「彼は昨日、私と会っても話してもいない」という意味になる。

煙草を吸いながらお酒を飲まないのは次のうち誰でしょうか?
A) Kevin sometimes smokes and drinks.
B) Stuart doesn’t always smoke and drink.
C) Bob loves drinking but he doesn’t drink and smoke.

正解はCのボブ。A) 「ケビンは時々煙草を吸いながらお酒を飲む」、B) 「スチュアートはいつも煙草を吸いながらお酒を飲むわけではない」、C) 「ボブはお酒を飲むのが好きだが、煙草を吸いながらお酒は飲まない」という意味になる。

ここまでの例ですでにお気づきと思いますが、注意しなければいけないのは、「否定文における andor の使い方」です。通常、「A and B」は、肯定文では AB 両方とも(both)」という意味を持ち、「A or B」は、A または B、どちらか一方」という意味を持ちます。ところが、and と or が否定文で使われると、肯定文のケースとは異なる意味合いになります。

not A and B」は、A と B の両方であることが否定され、どちらか一方であるという「部分否定」を表現します。例えば、I don’t have my family and friends. なら 「家族も友だちも両方いるわけではない」、つまり、家族か友だちのどちらかはいるという意味になります。I don’t like Tom and Jerry. なら 「トムとジェリーを2人とも嫌いなわけではない」つまり、どちらかは好きということになります。

一方、「not A or B」は、A または B のどちらかであることが否定され、AB 両方が~ではないという「全否定」を表現します。例えば、I don’t have my family or friends. なら「家族も友だちも両方いない」、I don’t like Tom or Jerry. なら 「トムもジェリーも 2 人とも嫌い」という意味になるのです。

「not A and B」は部分否定、「not A or B」は全否定――この概念、私たち日本人にとって、とてもわかりづらいと思いませんか?ルールとして理解はしていても、肌感覚として未だにしっくりきていないのは私だけでしょうか?ネイティブスピーカーたちは、この使い分けをうっかり間違うなんてことはないのでしょうかね?

「not A and B」の用法でよく例文として使われるものに You can’t have your cake and eat it too. ということわざがあります。見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。意味するところは、「ケーキを持っていることと食べることは両立できない」、「両方を同時には手にできない」、転じて「二兎を追う者は一兎をも得ず」と解釈されています。

私は以前、なぜ上記の英文が「二兎を追う者は一兎をも得ず」という解釈になるのかずっと疑問に思っていたのですが、否定文における and の用法を学習して初めて理解することができました。なんだかんだ言っても、やはり文法は重要ということですね。英語を使う場面で文法をことさら意識する必要はありませんが、文法を学ぶことで、それまで釈然としなかったさまざまな事柄がクリアになったり、視野が広がることだけは確かです。

ついでながら、ややこしい英語といえば、ある有名な詩の一節にこんなくだりがあります。

Rose is a rose is a rose is a rose

一体何を言っているのか興味のある方は調べてみてください。

See you!