Paradox in English-speaking Skills

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長かった梅雨が明けたとたんに連日の猛暑です。今年の夏は、コロナのため夏休みらしいプランは立てられませんね。私は、都会の片隅で、セミの鳴き声を聞きながら冷やし中華を食して夏の気分を味わっております。今回は、『英語を勉強している人ほど英語が話せなくなる』パラドックスについてお話しします。

普段から英文を読み慣れていて、難しい単語にも英文法にも精通している人に限って、英会話が苦手というケースはよくあります。例えば、アカデミックなお仕事や専門性の高いお仕事をされていて、海外で出版された英語の論文などを日常的に読んでいるという方や、 TOEIC®のスコアは900点以上で、英語はほとんど聞き取れて語彙力もあるという方が、「英会話はほとんどできない」という状況が実際にあるのです。

こうした方々には、以下のような共通点があります:

・英語の読み書きが得意で、聴き取りも平均点以上

・英文構造や英文法に通じている

・ボキャブラリーが豊富である

・英語は英作文のスキルで話せると信じている

このようなタイプの方々は、英会話のスキルは会話の場における英作文スキルだと考えていることが多いようです。そして、実際に高いレベルの英語力や英作文能力を持ち合わせているため、英会話の際に自分の言いたいことを直訳しようとする傾向があります。伝えたい内容に忠実であろうとすればするほど、頭の中にある日本語表現に最もフィットする英単語や表現をわずかな会話の間に探し出す作業に没頭してしまい、思わず受け答えのタイミングを逸してしまったり、会話のリズムに乗り遅れてしまったりするのです。また、語彙力のある人ほど、「ここでどの単語を使うのが最適か?」などと迷ってしまう悪循環もあるようです。ですから、英会話の際に「直訳」へのこだわりは捨てましょう。

読み書きの能力と英会話の能力を語る際に、ひとつ認識しておくべき事柄があります。それは、書き言葉と話し言葉には大きな違いがあるということです。英語を読み慣れている方は当然、英文法の知識も豊富なため、常に正しい文法へのこだわりがあります。ところが、実際に話し言葉というものは、書き言葉とは対照的にきちんとした英文法のルールに沿っていないことが本当に多いのです。英会話で使われる英文表現は、とてもカジュアルで不完全、そして変則的だということです。そして、日本人には馴染みのない省略形や短縮形、時にはスラングのような表現も頻繁に使われます。そのため、きちんとした英文で受け答えしようと構えていると、いきなり見たことのない変化球を高速で連発され、どこからどう打ち返したものかと、お手上げ状態に陥ることになります。ですから、英会話の際に「正しい文法」へのこだわりも捨てましょう。

では、ネイティブの人たちは、会話の際にどのような単語を使うことが多いでしょうか?彼らの日常的な会話の中で、私たちが苦労して覚えてきた然るべきまっとうな英単語が使われる頻度はごく僅かです。仕事で英語を使うという方も、ビジネス英語の教材などでビジネス向きとして推奨されている英単語を仕事仲間の外国人が口にすることはほとんどないはずです。会話においては、彼らは通常、形式ばった英単語の代わりに、get、have、give、makeなどといった基本動詞や、2つ以上の単語がセットで意味を成すイディオムを頻繁に使用します。こうしたシンプルな単語をいくつも組み合わせて早口でまくしたてるネイティブトークは、書き言葉に慣れ親しんでいる日本人が最も苦手とするところではないでしょうか?しかも、そこには本来あるべきはずの文法ルールもろくに存在しないのですから、とらえどころがなく、受け答えもおぼつかなくなるはずです。ですから、英会話には「単語力が必要」という思い込みも捨てましょう。

そもそも英会話とはコミュニケーションであり、そこで最も大切なことは、会話における瞬発力、つまり「タイムリーな受け答え」に尽きると思います。この「タイムリーな受け答え」を実現するためには、ハイレベルの英文法知識や英作文のスキル、そしてたくさんのボキャブラリーを身に付けても十分ではないということです。

「英語は読めるけど話せない」という方は、結局のところ、英語を話すために必要なことをしてこなかっただけのこと。そんな方は、stay home の時間が増えたこの機会に、「英語が読めて話せる」自分に変わるための一歩を踏み出してみるのはいかがでしょうか?

See you!