英文を支配するthat

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インターネットで買い物をすることが多い私ですが、そのせいか、最近では本人確認やアカウント情報の入力を求めるおびただしい件数のフィッシングメールが毎日送られてきます。迷惑メールのトレイに振り分けても、次々と異なるアドレスから同様のメールが送られてくるためきりがありません。皆さんにもご経験があることと思います。そんな中、よく利用する通販サイトから「メールやSMSが弊社から送信されたメッセージであるかどうかを見分ける方法」という主旨のメールが届きました。けれども、そのメールさえ何だか怪しい気がして、今もリンクを開けないでいる私です。まったく厄介な世の中になってしまったものです。(この場合のフィッシングは、fishingではなくphishingです)

さて、先日、久しぶりに英語の小説を読み始めたところ、最初の数ページを読んだ段階で『ん?このthatは何だろう?』 と早くもつまずいてしまいました。「that」にはさまざまな用法があり、受験英語でも、文中の「that」をどう解釈するかがポイントとなる出題がよくあります。英文読解では、多くの方が「that」で悩んだ経験をお持ちではないでしょうか?

「that」には、指示代名詞、接続詞、関係代名詞、副詞の役割がありますが、その使い方は多岐にわたります。特に、長文の中にさりげなく存在している「that」は、文の構成やその意味するところを支配しているケースが多く、個々の用法の正しい理解なくして多くの英文を読みこなすことはできません。

それでは、さっそく頭の体操です。次の英文を和訳してみてください。

The teacher told that that that that that student used that way was grammatically wrong.

いかがでしょうか?迷わずに和訳できましたか?このような英文は、日常的に使われることはまずないものの、「that」の用法をひととおり確認・復習する上では有効です。最初の「that」は接続詞、2番目は指示代名詞、3番目は「that」という単語(そのもの)、4番目は関係代名詞、5番目は指示代名詞、6番目は副詞として用いられる「that way」という慣用句の一部を構成しています。よって、和訳は以下のようになります。

先生は、あの生徒があのように使ったあの「that」は文法的に間違っていると言った。

文法をいくら勉強したところで英語を話せるようにはなりませんが、文法の知識、つまり英文の構成上のルールや法則、そして、それぞれの単語に固有の用法を知らなければ、どうしても理解できない英文があります。文法知識が乏しいと、英語に対する視野が狭くなりがちです。その結果、自分の思い込みで英文を解釈してしまうことがあるため注意が必要です。そこで今回は、私たち日本人が解釈に悩むことの多い「that」の用法をいくつかピックアップしてみたいと思います。

・The campaign was successful in that we have exceeded the sales goal.
(売上目標を上回ることができたので、キャンペーンは成功だった)
・The two boys are similar, in that they both grew up in a poor family, but their personalities are quite different.     
(その2人の少年は、貧しい家庭で育ったという点で似ているが、性格はまったく違う)

「in that」は「~なので(=because)」「~という点で」という意味で使われる慣用句です。日本人の場合、that = 代名詞という意識がとても強いので、こうしたフレーズを知らないと、まずthatが何を指しているのかと悩んでしまうかもしれません。次回この用法に出会ったら、迷わずに内容を理解してください。

・She went for a walk for all that it was raining.  
(彼女は、雨が降っていたにもかかわらず散歩に出かけた)
・For all that he has a big mouth, he is loved by everyone. 
(口が軽いにもかかわらず、彼は皆に愛されている)

「for all that」は「~にもかかわらず」という意味の慣用句です。「for all + 名詞」の形でも同様の意味で使われます。ここでも、thatが慣用句の一部だということがわからないと、文の意味を正確にとらえるのは難しいと思います。ちなみに、日本では大口を叩く人のことをビッグマウスと言いますが、英語ではもっぱら「口の軽い人」のことを「a big mouth / have a big mouth」と言います。

He is late for an appointment, and that very often.
(彼は約束に遅れる。しかも、しょっちゅうだ)
・She can swim fastest in the club, and that beautifully.  
(彼女はクラブで最も速く泳ぐことができる。しかも、その泳ぎは美しい)

「and that」は、前文全体を受けて「しかも~」「その上~」と補足説明を行う場合の慣用句で、andの前にはカンマが入ります。インフォーマルな表現として「~など(= and so on)」という意味で文末で使われることもあります。

・I didn’t join her farewell party. Not that I didn’t want to.
(私は彼女の送別会に参加しなかった。かと言って、参加したくなかったわけではない)
・Do you think he is involved in this incident? Not that I know of.
(この事件に彼が関与していると思いますか?私の知る限りでは、それはないと思います)

上記1つ目の文と2つ目の文では、thatの用法・意味が違います。1つ目の文のthatは「It is not that ~」といういわゆる強調構文のthat 。2つ目の文のthatは制限用法と呼ばれ、“Not that I know of.” = “He is not, as far as I know.” という意味を表しています。どちらも会話でとてもよく使われる表現ですので、ぜひ覚えておいてください。

・I have never caught a fish that big before.
 (私は今までにそれほど大きな魚を釣ったことはない)
・I didn’t answer his call because I was that angry.
 (私は彼の電話に出なかった。それほど怒っていたのだ) 

副詞としての役割を持つthatは、数量・程度を表す語を限定して「それほど」「そんなに」という意味を表し、この場合は通常否定文で使われます。また、2つ目の例文のように性質・動作を表す語を限定して使う場合もあります。

・We talk to him in English so that he can understand us.
・We talk to him in English that he can understand us.
・We talk to him in English so he can understand us.
 (私たちは、彼が私たちの言うことを理解できるように、彼に英語で話しかける)
・He speaks English so fast that we can’t understand him at all.
 (彼はとても速く英語を話すので、私たちは彼の言うことが何もわからない)

最後に取り上げるのは「so」と「that」を含む構文です。「so」と「that」を使った構文はややこしいという印象をお持ちの方は多いのではないでしょうか?実際ややこしいのですが、一度きちんと整理できれば、決して難しくはありません。

上記の例文で、上から3つ目までの文は「so that」構文で「~するように / ~できるように」という目的を表す構文です。この構文の場合、that以下の文にはwill / may / canなどの助動詞が必要です。 では、なぜこの構文がややこしいかと言うと、実は「so」または「that」の省略が頻繁に起きるからです。そのため、上記3つの「so that」構文はいずれも同じ意味になります(2つ目の文では「so」が、3つ目の文では「that」が省略されている)。一方、4つ目の例文は「so ~ that」の構文で「とても~なので・・だ」という意味を持つ、上の3つとは異なる構文です。これは中学で学習する構文だと思いますが、that以下が肯定文の場合は「enough ~ to」、否定文の場合は「too ~ to」の構文で言い換えることができます。

以上、今回は、普段あまり意識されることがないと思われる「that」の用法をご紹介しました。「that」の役割には本当に深いものがあります。「that」を単なる代名詞や接続詞と考えていると、 英語の大きな迷路に迷い込んでしまうことがあります。英語に取り組む際は、常に広い視野を持つことが大切です。そのためにも、時には英語の辞書とゆっくり向き合ってみることをお勧めします。

See you!